人間は二足歩行という、重力に逆らった姿勢で生活しています。体重の約8%、およそ5kgとも言われる重い頭部を、私たちは日常の中で前後左右に動かしながら、2本の足でバランスを保って立っています。
こうした重力との絶え間ないやり取りの中で、骨格や背骨の構造は長い進化の過程を経て、今の私たちの体にデザインされています。
例えば物を持ち上げる、歩く、座るなどの動作は、すべて体の軸を重力に対してバランスさせることで成立しています。この「当たり前の動き」を日々無意識のうちに繰り返してきた結果、あなたの今の姿勢が形づくられました。
この世界にまったく同じ人が存在しないのと同じように、まったく同じ姿勢も存在しません。
たしかに、両親から受け継いだDNAの影響で体格や骨格のデザインは似る傾向があります。しかし、私たちは生まれた瞬間から重力の影響を受けながら、日々の外的ストレス(姿勢、動き、ケガ、環境)に適応し、姿勢も日々少しずつ変化していくのです。
「悪い姿勢」と一言で言っても、単にそれを矯正すればいいわけではありません。その姿勢は、あなた自身の体が長い時間をかけて「今の自分にとって最もバランスが取れる形」として適応してきた結果なのです。
だからこそ、身体にとって本当に必要なことは、無理な形に矯正することではなく、「内側の力=イネイトインテリジェンス」がしっかり働く状態を整えることなのです。