構造的ストレスが症状を作る

これまで、インネイトインテリジェンス(内在する叡智)が子供の頃からの生活習慣や環境に適応しながら、最良の姿勢をデザインしてくれるというお話を続けてまいりました。

では、ここでひとつの疑問が生まれます。

「最良のデザインであれば、なぜヘルニアのような症状が出るのか?」

前回ご紹介した側弯症の方のように、構造的ストレスが明らかであっても、神経症状は一切なく、むしろ「背中の疲労感」のような軽微な訴えのみで来院された方もいらっしゃいます。

その方のカラダは、内在する叡智が絶えず構造的ストレスを逃がし、椎間板や神経への圧迫へと至らないようバランスをとってくれていたのです。


一方で、同じように構造的ストレスが存在していても、ヘルニアや脊柱管狭窄症といった症状を発症する方もいます。違いは何でしょうか?

答えは、「適応できるキャパシティ(余白)」の差にあります。

L4/L5/S1 脊柱管狭窄症

この方は、腰椎4番・5番・仙骨間に強いズレがあり、下肢への痛み、痺れ、間欠性跛行といった症状が出ていました。骨盤自体のバランスは悪くありませんが、腰椎下部のズレが大きく、椎間板や神経への負担が限界を超えてしまったのです。

これは、インネイトでさえ補正できなかった状態。
植物で言えば、茎が太陽に向かって伸びたいのに、鉢が小さすぎて根が張れないようなものです。

では、なぜ内在する叡智は、こうした重大なストレスを逃がせなかったのでしょうか?


その答えは「上部頚椎のズレ」にあります。

上部頚椎、特に頚椎1番(アトラス)は、神経伝達の中枢に極めて近い場所に位置しており、ここがズレることで、神経システム全体の伝達効率が低下します。

つまり、カラダ全体がどのようにバランスを取るべきかという「情報のやり取り」が不完全になり、本来持っていた補正力・適応力が発揮されにくくなるのです。

インネイトが間違えたのではなく、インネイトの働きを妨げる“干渉”が存在していたのです。


私たちの仕事は、このような“干渉”を見つけ、取り除くことです。
それによって、カラダ本来のバランス力と回復力が取り戻されます。

「痛み=悪い状態」ではなく、「痛み=カラダの限界サイン」。
その背景には、あなた自身が持つ叡智と、それを阻害する構造的要因の存在があるのです。