アトラス、唯一の存在

頸椎1番、通称アトラスは、身体の構造とバランスにおいて極めて重要な役割を担っています。

人間の背骨は、電車の連結のように椎体と椎間板によって可動性を持ち、それぞれが連動して動くように設計されています。首、胸、腰といった各部位ごとに異なる構造の関節がその動きを制限・調整し、全体のバランスを取っています。

特に骨盤は、脊柱の歪みを逃がす重要なパーツです。仙骨を中心に左右の寛骨が相反する動きをすることで、まるでサスペンションのようにストレスを吸収しています。

そして、頭部と骨盤、それをつなぐ背骨は、頭の重心位置に応じて全体がバランスを取っています。人間の頭部は体重の約8%(およそ5kg)にもなり、これを支えながら重心を保つために、首から骨盤までが連動してわずかな歪みで調整しているのです。

頚椎1番オープンマウス像


ここで注目したいのがアトラス(頸椎1番)の構造です。

このアトラスには、他の椎体と違い椎間板が存在しません。そのため、アトラスは頭部と直接連結される形で、横へのスライドや回旋など、首の動きの50%以上を単独で担っています

残りの50%は、頸椎2番〜7番までが連動して動きますが、他の椎骨は全て関節によって制限されており、アトラスほどの可動性はありません。

このように、アトラスは構造的にも機能的にも非常に特別な存在です。


しかし、このアトラスに“ズレ”が起きるとどうなるでしょうか?

アトラスがズレた状態、つまり「サブラクセイション」が起きると、頭部の重心位置が狂い、そこから下にある背骨や骨盤、下肢までもが連動して崩れていきます。

さらに、アトラスは神経伝達の中枢に近い場所にあるため、ここに干渉があると、インネイトインテリジェンス(内在する叡智)の働きが制限され、本来持っている調整・回復能力がうまく機能しなくなってしまうのです。

アトラスのサブラクセイションは、見た目の姿勢変化だけでなく、神経の働きや自己治癒力そのものに影響する、極めて深刻な問題なのです。

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私たちの役割は、このアトラスに起きた干渉=サブラクセイションを見つけ、正すこと。

それによって、カラダ全体が本来持っている叡智によって再び最良のバランスを保てるようになります。

“整える”のではなく、“邪魔しない”。
この考え方こそが、私たちのケアの根幹なのです。