Whole In One 一つで全体を

Whole In One

B.J.パーマーは1930年、「ホールインワン学説(H.I.O.学説)」を発表しました。

これは、「メジャーサブラクセイションをアジャストメントすることで、複数のマイナーが自然と解消されるが、逆は成立しない。真のメジャーは上部頸椎(C1・C2)にのみ存在する」という考えに基づいています。

この“一つで全体を整える”という思想を「Whole In One」と名付け、ゴルフの「Hole In One」にかけて「H.I.O.学説」と呼びました。

それを機に、パーマースクールでは上部頸椎のみをアジャストメント対象とする教育が行われるようになります。B.J.パーマーは、上部以外のアジャストメントを認めず、実際にそれを行った生徒が退学になったという逸話も残されています。

上部頸椎のアジャストメントのみで全身の神経伝達が整い、自然治癒力が最大限に発揮される——。これは、カイロプラクティックの哲学的核心であり、科学的検証の道を歩み始める分岐点でもあったのです。

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メジャーがマイナーを正す

NCGH graph

レントゲン像

「NCMニューロカロメーターで8箇所にブレイク(神経干渉の反応)が確認され、パルペーションやレントゲンでも同様に8箇所のズレが見つかった。しかし、それら全てがサブラクセイションであったのか?」

この疑問に対して、N.C.G.H.ニューロカログラフの導入により、調整前・後・毎来時のグラフデータを継続的に記録・分析できるようになり、検証が進みました。

そして導き出された結論は、「8箇所のうち真のサブラクセイションは1つのみであり、他の7つはミスアライメント(補正作用による代償変位)である」というものでした。

つまり、唯一のメジャーサブラクセイションをアジャストメントすることで、他のマイナーは自然に整い、やがて消失していく。この理論はグラフ変化とレントゲン像の検証により裏付けられ、真の原因へのアプローチの重要性を示すものとなりました。

リアライメント(矯正的処置)ではなく、サブラクセイションという「原因」へのアジャストメントこそが、本来のカイロプラクティックの目的であるという視点がここに示されています。

参考資料:The Subluxation Specific — The Adjustment Specific(1934年)

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アジャストメントをしない選択

NCGH graph

N.C.G.H.(ニューロカログラフ)の導入によって、脊柱全体にわたるヒートスイング(神経熱の変化)をグラフとして視覚的に記録できるようになりました。

アジャストメントが適切に行われメジャーのサブラクセイションが解消されると、マイナーも自然に消失し、グラフ上に明らかな変化が現れます。この変化を次回のプラクティス時に比較することで、サブラクセイションの存在や回復状態を客観的に確認できるようになりました。

これにより、B.J.パーマーが提唱した「サブラクセイションがなければアジャストメントは行わない」という選択が、データとして裏付けられるようになり、施術の必要性そのものを科学的に判断する時代へと突入していったのです。

なお、N.C.M.導入時に異論を唱えて離脱したカイロプラクターも多くいましたが、N.C.G.H.の登場はその根本的な価値観の違いに決定的な答えを与えたと言えるかもしれません。

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客観性の追求

neurocalograph

かつては、サブラクセイションの発見にはメリックシステムや患者の症状が重要な判断材料とされていました。しかし、N.C.M.(ニューロカロメーター)の開発により、その判断基準が大きく変わっていきます。

B.J.パーマーが提唱した「メジャーとマイナー論」に基づき、一つのサブラクセイションと、それに伴う複数の代償的ミスアライメントを明確に分けるため、N.C.M.による温度検査とレントゲンによる構造的確認がセットで用いられるようになりました。これにより、これまでの主観に依存した検査から、誰もが再現できる客観的なアプローチへと進化していったのです。

さらに1928年には、検出結果をグラフ化して記録する「N.C.G.H.(ニューロカログラフ)」が登場。これは現代のTytron-C5000サーモグラフィーの原型とも言えるもので、施術の一貫性と進捗の検証を可能にしました。日々の記録を蓄積・分析することで、カイロプラクティックの在り方そのものを変革していったのです。

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N.C.M.ニューロカロメーター

evins

neurocalometer

N.C.M.ニューロカロメーター(ニューロ=神経、カロ=熱)は、熱伝対であるサーモカブルが開発されたことにより、ドーサ・エビンスにより発明されました。

※熱伝対とは: 異なる2種類の金属をループ状に接続し、温度差により微弱な起電力が発生する原理を利用し温度を測定する装置です。

椎骨がサブラクセイションを起こすと、そこの神経の周りの組織が圧迫を起こします。これは神経の伝達エネルギーに抵抗を起こさせることになって熱を発生させます。この異常な熱の発信を検出し、その神経系の阻害を起こしている椎骨を見つけることが重要であると結論付けて、B.J.パーマーは以後、N.C.M.ニューロカロメーターを使うことがサブラクセイション認定に必須としてしまうのです。

現代では「ナーブスコープ」と呼ばれ、今も多くの現場で使われ続けています。

ナーブスコープ

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カイロプラクティック黎明期

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創始者D.D.パーマーの思想からスタートしたカイロプラクティックは、息子B.J.パーマーが学校を継承し、レントゲンやN.C.M.(ニューロカロメーター)を導入するなど進化を遂げていきました。

その過程で思想の違いから離れていく人々が現れ、それぞれが独自の考えをもとにスクールを設立。現在では大学教育にまで発展し、多様な理論・哲学・テクニックが存在しています。

日本にはアメリカから紹介されたさまざまなカイロプラクティックテクニックが伝わっており、多くの先生方がそれぞれの方法で実践を続けています。

しかし、B.J.パーマーが実践したカイロプラクティックは、一般にイメージされるものとは異なり、世界的にも継承者は少数とされています。私は、彼の哲学を継承すべく、全39巻のグリーンブックを読み解きながら、日々研鑽を重ね、学びを発信しています。

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神経圧迫はどこ?客観的に見つける

neurocalometer

1923年にはN.C.M.ニューロカロメーター(脊柱のズレによって発生する神経圧迫の有無を測定する測定器)が開発されます。

カイロプラクティックのターゲットは神経インパルスの干渉です。全脊柱から全身に伸びている神経、その干渉部位を椎間孔レベルで確認しようと開発されました。

背骨の中での一つのメジャーと、複数の代償作用によるマイナーな部位も、これによりサブラクセイションの存在、消失を知ることが可能になり、レントゲンと合わせることにより、それまでの主観が入りやすい検査から、より客観的に判断できるようになっていきます。

カイロプラクティックの創始者D.D.パーマーは、カイロプラクティックは手によってのみ成すものだと定義しました。それは検査から施術に至る全ての行為を意味していて、症状などから主観的に判断していきます。そこに息子B.J.パーマーが検査に器械を導入することで、症状にとらわれずに客観的に判断を行うようにしていきます。これに異を唱え彼と敵対したカイロプラクターも多く、カイロプラクティックが分かれる一つの分岐点になっていったのです。

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メジャーとマイナー

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頭蓋骨から仙骨まで、頚椎7個・胸椎12個・腰椎5個の椎骨が連結し、その間から末梢神経が出ています。これら全体、すなわち「フルスパイン」を調整対象とするのがメリックシステムです。そこに複数のターゲットとなり得る部位が存在します。

B.J.パーマーは、「メジャーと成りえる原因と、マイナーと成りえる原因があるのではないか」という研究を進め、一つのサブラクセイションと、複数の代償作用によるミスアライメント。メジャーとマイナー論を1918年に発表します。

メジャーとは、全体の調和をもたらし得る部位であり、それは生命体にとって最も重要な部位で、先天的知能との関わり合いがいちばん深い椎骨のサブラクセイションをいいます。メジャーとなるサブラクセイションは、訴える症状や病名にかかわらず、人体を構成するすべての細胞、組織、器官へのメンタル・インパルスの伝達を妨害し、全身の機能に影響を及ほすものであり、これはすべての不調和の原因となりえます。ゆえにメジャーのアジャストメントは、全身の機能の回復へと向かわせることにつながります。

メジャーに対してマイナーとは、唯一(メジャー)のサブラクセイションの代償作用として、二次的に変位を起こしているミスアライメント(マイナー)のことです。部分的な症状や病気との関連性(メリックシステム)はあっても、「根本原因」とはなりません。マイナーの部位は、メジャーのサブラクセイションによって受ける脊柱への構造上、機能上の損傷、器官の機能低下から守るために取られる保護手段であり、この部位は、メジャーのサブラクセイションが取り除かれると共に、イネイトインテリジェンス(内在する叡智)により本来の機能に調整されていくのです。

参考資料:
『臨床カイロプラクティック 哲学・科学・芸術』塩川満章D.C.(1999)
『上部頚椎カイロプラクティック 哲学・科学・芸術』賀来史同(1990)

以下の記事もあわせてどうぞ:
メリックシステム

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フルスパイン、全脊柱をターゲット

C.S.Gonstead

カイロプラクティックの世界に入って最も影響を受けたのは、塩川滿章D.C.です。戦後初めてアメリカ・パーマー大学へ留学し、日本に多くの著名なカイロプラクターを紹介してきたレジェンドです。

私は、シオカワスクールオブカイロプラクティック本科で学び、ガンステッドテクニックを中心に深く学びました。塩川D.C.はガンステッドの弟子であるトラキセルD.C.系に属し、私の先輩方もその流れを受け継いでいます。

また、もう一つの流派であるコックスD.C.の影響を強く受けた塩川雅士D.C.・貴士D.C.が帰国し、ちょうどその頃アレックス・コックス本人によるセミナーも日本で開催され、両派の学びを得られたのは幸運でした。

このように二つの流れを持つガンステッドテクニックですが、創始者のC.S.ガンステッドは1921年にパーマースクールオブカイロプラクティック(後のパーマー大学)に入学し、1923年に卒業。パーマーテクニックを習得したのち、自身の技術を発展させ、現在の「フルスパイン」でのガンステッドテクニックを完成させました。

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2015年をふりかえり思ふ

今年も今日1日で終わりの日が来てしまいました。カイロプラクティックの勉強を続け、つくば市近郊にストレートカイロプラクティックを紹介できたことで、たくさんの出会いがあったことに感謝いたします。

B.J.ニーチェスト

D.D.パーマーのファーストアジャストメントから120年。D.D.パーマーからB.J.パーマーへと受け継がれ発展したカイロプラクティック哲学は、B.J.パーマーが実践していたプラクティスを継承してこそ、目的が達成されると信じています。

明日、新しい朝を迎え2016年が始まります。皆様がサブラクセイションフリーで過ごされることを願います。

カイロプラクティックオフィスmisaki
代表 横山壮一

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